「技能伝承」は何から手を付けるべき?

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こんにちは。今回の記事では、最近多くのお客様から聞こえてくる「技能伝承」の問題について書いてみたいと思います。汽力発電プラントの操業や保全のお仕事について技能伝承の問題を何とかしたいと思っていらっしゃる方はヒントになるかもしれませんので、是非読んでみてください。

お客様の声を聞いていると、人材育成や技能伝承に関する課題を組織のいろいろな立場の方からよく伺います。

  • 「ベテランが退職する中で、なかなか技能伝承が進まなくて…」(部長様)
  • 「そもそも3Kの職場だし若い人が入ってくれなくて…」(課長様)
  • 「なんでそんな間違いを?っていうトラブルが多い」(本社様)
  • 「じつは設備の部位の名前さえよくわかっていない」(若手の方)

技能伝承に関係する言葉は、引用しだしたら切りがないほどですが、意外にも技能伝承の問題をきちんと要素に分けて、どこから手を付けていくべきかを考えている方は少ないように感じます。

「技能伝承」という単語は、日本的な企業で勤務している方にとっては、すでに当たり前のものになっていて、「つまり〇〇という問題ですよね?」のように明確に認識を合わせたりするようなことが少ないように思います。

例えば、「問題を解け」と漠然と言われても、具体的にどんな問題を解けばいいか分かりませんが、「3829+9219はいくつだ?」と言われた方が、わかりやすいですよね。(私なら迷わずエクセルを立ち上げます)

汽力発電プラントの保全・操業のお仕事で「技能伝承」の問題を解決するために、どうすればよいかを明確にさせていこうというのがこの記事の目的です。良く分からないけど解かなければならない状態から脱して、どうなっていれば良いかを考えるヒントになるのがこの記事の狙いです。

結論としては、ベテラン不在の中で、以下3つができている時に技能伝承の初期フェーズが終わったと言えるのではないかと私は思っています。

常に技術の向上が必要な世界だと思いますが、まずこの3つさえできていれば、技能伝承の問題を乗り越え、実務という体験を通じてスキルを向上させ、成長していけるのではないでしょうか。

①保全・操業のお仕事の履歴やトラブルに関する資料を自分ですぐに見つけられる

多くの職場で何かどこにあるかという情報が整理されずいますが、ベテランさんがいなくなってまず困るのは資料探しではないでしょうか。

ベテランさんのように、例えば30年同じ仕事をし、あらゆる実務を経験しながら仕事を身に着けることは、終身雇用にならない今の時代には難しいと言えます。その代わり、過去の資料をすぐに見つけることができるようにしておくことで、必要な知識を引っ張ってくることができるかもしれません。

ベテランさんが「平成12年に節炭器で漏洩トラブルがあったよ」と言われてからその資料を探しにいくのではなく、節炭器の漏洩トラブルの有無を自分で検索できる環境があると仕事が早そうですよね。

例えば、過去に似たようなトラブルはなかったか、その当時の対策はどんなことをしていたのか、その時の工事期間は何日必要だったのか、といった情報は今の保全計画を立案するためにも重要ですし、実施している検査内容を見ればどのような検査手法があるのかも分かるかもしれません。検査記録や工事記録がすぐに見つけられれば履歴を整理でき、PDCAサイクルをまわしながら、上手に検査計画をたてることができるかもしれません。

②設備の構成・メカニズム、名称・部位について基本的な知識が身についている

例えば汽力発電設備の仕組み、燃料の流れ排ガスの流れ水・蒸気の流れ、ボイラー設備の重要部位、蒸気ドラムの役割、節炭器の役割、過熱器の役割、ミルの構造などが分かっているとその知識をもとに、何か問題が起こったときの動きが早くなります。

ボイラに異常があって、給水量が増えている時に、「給水量ってなんだ?」という状態だとそれを調べるところからスタートですが、「わかっていれば、ボイラに供給されている水の量が不自然に増えている、異音もしているし漏洩してないか?」といった形で位置から調べるよりも、アクションが早くなりますね。

③設備ごとの保全間隔、取替のための基準が分かっている

例えば蒸気タービンは3年に一度開放点検をする、その時の検査はクリアランスと翼根の非破壊検査をする、き裂が検出されたら取替える。火炉のボイラーチューブは管厚さが何mmになったら取り替えるなど基準が設定できていると仕事がスムーズですよね。ケースバイケースで決めてしまいがちな場合もありますが、そうするとベテランさんの属人的なスキルに頼らなければならなくなってしまいます。累積運転時間を見るべきなのか、起動発停回数を評価に入れるべきなのかはっきりと基準を設定できると良いですよね。

どんな仕事でも「どうなったら、こうする」という基準がはっきりしていると仕事がスムーズです。予算や工程の制約はありますが、過去の検査履歴やトラブル事例などから保全業務の基準を一度明確化しておくと良いですね。

いかがでしたでしょうか?もし所属されている組織で、技能伝承が課題になっているのであれば、上記の観点で一度取り組むべき内容を整理してみてはいかがでしょうか?

「技能伝承」は何から手を付けるべき?」への1件のフィードバック

  1. 日本は「終身雇用」という雇用制度を良いことに教育研修制度をうまく作らず、ここ10年ぐらいになって技能技術伝承について騒いできたような気もします。

    従来の日本のやり方だと「いいからまずは言われたとおりにしろ」というような半ば体育会系的なノリがあったようですが(私は大きらいです)、その反面しっかり技能伝承が行われているかどうかと言うのは今の状況を見れば…というところです。

    体育会系の最たるものと思われている「軍」ではそのようになっていないというのは注目したほうが良い点ではないかと思います。まともな先進国の軍隊では「四の五の言わずに従え」という強権的なアプローチではなく、「趣旨・意義を説明して理解・説得させるアプローチ」が主流です。
    そのためにも、身体を動かすことも大切なのですが、こうした「知識をしっかりと蓄えること」も重要だと思う次第です。ちゃんとした知識がなければ判断はできません。

    このようなアプローチでないと現代で求められる高度な制御や機器を使いこなす(パフォーマンスをフルに発揮する)ことはできないと思います。

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